先日、司書教諭(学校図書館の先生)向けの勉強会に行ってきた。
勉強になったことを全部書くと卒論のようになってしまいそうなので、まずは「そういえば、学校図書館って…?」という基礎の部分に触れていこうと思う。
今回は「学校図書館っていつからあるの?」という疑問。
頭の片隅にずっとあったのだが、聞かれる機会がなかったと言い逃れしながら今まで調べてこなかった。
正確にいうと、大学生のときに学んでいたはずなのだが、すっかりと忘れてしまい、それを補完してこなかったという方が正しい。実に情けない…。
(横着者の精神がよくわかる…)
学校図書館法は72歳!
学校図書館の根幹といえる「学校図書館法」は1953年(昭和28年)8月8日生まれの法律である。
御年72歳。
戦後10年も経たないこの時期に、「学校に図書館を設置しよう」と国が決めた。
1953年は、NHK初の本放送が東京で始まったことで、「テレビ」というメディアが世に踊り出してきた歴史的な年でもある。
そんな中、「教員や子どもたちに正しい情報を届けよう」という姿勢を感じられる学校図書館法の存在は、インターネット社会における現代でも十分価値を感じられる。
学校図書館法(昭和28年8月8日法律第185号)
(定義)
第2条(略)…図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料(以下「図書館資料」という。」を収集し、整理し、および保存し、これを児童または生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童または生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備
(設置義務)
第3条 学校には、学校図書館を設けなければならない。
学校における設備として、運動場(屋内外)や保健室と同様、学校図書館は設置しなけばならないもの。
そんな施設を管理運営するのが司書教諭…と改めて自分の立場を考えると、なんだか身の引きしまる思いがするのは私だけだろうか。
(やはり横着者として自覚があるだけに不安感がすごい…。)
実はすごい!学校図書館法
「学校図書館法ができた」とだけ聞くと、「へ〜。」という感じだが、実はこの法律がすごい。
何がすごいって、学校図書館だけの単独の法律としては世界初なのだ。
しかも、現在も活動を続けている「全国学校図書館協議会(SLA)」が当時総力を挙げて署名活動に取り組み、100万人の署名を集めて成立にこぎつけたという、背景まである。
今や当たり前に設置されている学校図書館だが、その歴史を思うとしっかりと活用してあげたくなる。
図書館の設置目的は「読書推進」じゃない??
さて、「学校図書館法」を見て、あれ?と感じた方もいるのではないだろうか。
意外にも「読書」という言葉が出てこないのである。
学校図書館=読書をする場所・図書の貸出をする場所
というイメージがあるかもしれないが、実はそれ以上の役割があるのだ。それが…
図書館資料を収集、整理、及び保管して、学校の教育課程の展開に寄与する
これ、若い頃に読んでいたら「なんのこっちゃ?」と思ってスルーしていた気がする。
が、ある程度経験を経た今ならわかる。要は
教育課程に沿って資料を集めて
それを探しやすいように整理しながら保管することで
学びをサポートしなさいよ
ということである。その上で、「健全な教養の育成=読書活動」を推進せよ、と。
冷静に考えれば「学校=学びの場」なのだから、学校にある図書館が単なる「本の貸出機関」であるワケがない。
先ほど「しっかりと活用してあげたい」と言ったのは、ここ。
子どもたちにとって「本を自由に読んだり借りたりできる」だけでは、学校図書館が活用されているとは言い難いのだ。
その後の変化
学校図書館法が施行されてから現在まで、2回ほど大きな法改正が行われた。さっくりとした内容は以下は通り。
1997年(平成15年) 司書教諭が必置(ただし12学級以上)
2014年(平成26年) 学校司書の配置の努力義務
学校図書館の運営は時間と手間がかかる。
そのサポート体制が徐々に整いつつある…といったところだろうか。
しかし、司書教諭は兼務であることがほとんどだし、学校司書も必置ではないため、各市町村の判断に委ねられているのが現状だ。そもそも、司書教諭の免許を持っている教諭もそこまで多くない。
おわりに
学校図書館の必置が叫ばれてから70年。
全国の小中学校にほぼ100%学校図書館が置かれるようになり、今では司書教諭や学校司書の存在も少しずつ広まっている。
が、しかし。
実際に司書教諭になっても何をしていいか分からず、本の貸出屋さんとして尽力したり。
購入図書の選書の仕方がわからず、ただ単に好みの本を選んでみたり。
本が棚に入らなくてどうしていいかわからず、ぎゅうぎゅうにねじ込んでみたり。
そんな司書教諭もいるのではないだろうか。
そう。過去の私である。
大学時代の講義(しかも眠気に半分意識を持っていかれていた)でしか学んでこなかったのだから、無理も無い。
だからこそ、今、優秀な先駆者の話を聞いたり、自らテキストをめくったりして必死に勉強しているワケである。
学校図書館に割かれている予算は、学校全体で見れば少ない額では無い。
本当の意味で学校図書館を運営しなければ予算も泣くというものであろう。
楽しみつつ、学びつつ…40代という無理のできないおばさまの体を駆使して、今日も学校図書館づくりに勤しんでいる。
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