心を入れ替えた一発目は、やっぱり子どもとのエピソードにしよ♪と思っていたのに、夢も希望もないタイトルである。この体にしっかりと痛みと疲労が記憶されているうちに、形にせねばと思ったのがこの話題でした。
お姉様方の一言に思うこと〜伏線〜
「40歳過ぎると、一気にクルよ!」
そんな言葉を聞いたことはないだろうか。代謝が下がるとか、傷が治りにくくなるとか。健康診断でも数値がわるくなって…みないな話もちょいちょい聞く。私も、周囲のお姉さま方にこれらの予言を授かるたびに「そんな予感がすでにするんで、やめてくださいよ〜(笑)」と返し、「キタるべき何か」に対しての心の準備はできている様子を演出。しかし、内心こんなことを考えながら、にやついていた。
--とはいっても?私、結構カラダ動かしてますし?健康的な食生活も意識してますし?現役で動ける若々しいタイプに分類されるんじゃな〜い?
私は、わりとよくこういう勘違いを起こす。後から「なんて恥ずかしい!」と赤面しながら悶えることになるのだが、すでにライフワークに組み込まれている。失敗から学べばいいんだよ、というまっとうなアドバイスをいただくこともあるが、「ですよね、へへ…」と言いながら、「根がお気楽ハッピーで常に自己評価が上振れする」という特性が治る気がしない。絶望。
話を戻そう。今回も、その勘違い赤面付きハッピーセットを抱えてルンルンしていた。なぜなら夏休み真っ只中だから。図書室の仕事が捗る絶好のチャンスだから。今年の夏休みは「大型テレビを導入して図書室で学習しやすくする」という、心躍るミッションが待っていた。普段成果が見えにくい仕事だからか、はっきりと何かが前進するというのは実に心地よい。
いざ!図書室仕事へ

当日、同じく図書担当の先生と声をかけあって、図書室に大型テレビ設置計画⭐️に着手することになった。
いよいよ65型テレビを下ろすのだ。3階から。二人で。
--あ、やめたi
あっぶない。思っちゃいけないこと思うところだった。「じゃあ、いきますか!意外と私も力あるんで安心してくださいね!」と明るい声を出す。このとき一緒に運んでくださった先生(ハヤブサさんと呼ぶことにする。とにかく仕事が速く、視点が鋭いのだ。私とペアですみません。)は、この不安しかない同僚に対しても穏やかに笑顔を見せてくれた。ありがたい。そして、やめたい。あ、言っちゃった。
30度を超える校内を、大型テレビを運びつつ移動するというのは、思った以上にきつかった。しかもテレビを設置するための台座?的なものまで運ぶ必要がある。当然重い。汗が背中を伝うたびに「これはダイエットこれはダイエット」と心の中で復唱し続ける。若々しさ、とは…。
「かかち先生?」
--これはダイエット。
「あの、このテレビ、図書室のどこに置きましょうね?」
--最近、ウエストが気になるし、ちょっと腰を捻りながら運ぼうかね。
「多分なんですけど、今の配置だとテレビ使えないですよね。コンセントの位置とか。」
--お。この捻り方いいかも。腹筋にくる!
「図書室の机の位置、全体的に動かしましょうか!」
--??!!
さすがハヤブサさん。見てる!全体を俯瞰して見てる!でも、私の体はテレビを運んだ段階で結構キテる!!このまま到着したら、間違いなく“図書室に大型テレビ設置計画⭐️”が“図書室大改造計画⭐️”に変更される。敢えてゆっくりと歩きつつ、(「ちょっと重いね!」なんて言ってみたりした。小狡い。)どうにか、楽に全てが終わる方法を模索した。暑いし、腕痺れてきたし、腰痛くなってきたし。しかし、無情にも図書室に機材が揃ってしまった。テレビを台座に取り付けている間も汗が止まらない。「汗かいている私、ヘルシーじゃない?」とか、普段ならちょっと悦に入るところだが、このときはさすがに思わなかった。その代わりのように、口が勝手に動く。
「使いやすくしたいよねぇ。」-クーラーの効いた職員室に戻りたい。
「子どもたちがテレビを見ながら授業するなら、やっぱりこの(バカでかい)机の位置がねぇ。」-2学期でよくない?
「よ〜っし…」-一旦休もうって言おう!そうしよう!!
「やりますかっ!!」-あ〜!!!言っちゃった〜!!!!!
ハヤブサさんが、「ですね!」と、めっちゃ良い笑顔で答えてくれる。どこかから持ってきた使用済みプリントの裏に、NEW図書室の配置図まで描いてくれている。何パターンも考えるハヤブサさんの横顔は、児童への愛に溢れて見えた。私は、描き足されていく配置図を目で追いながら、「どの配置が一番机の移動が少なくて済むか」という理由で意見を言わないようにすることだけに集中した。ここで、ハヤブサさんに軽蔑されるという事態だけは避けたい。
「このアイディアいいですね!」
「わぁ!これだと、子どもが調べ学習するときの動線が完璧じゃないですか?」
「こっちは、担任の先生が指導しやすそう!」
必死。もう、必死。生み出されていく配置図を実現させるために、あとどのくらい汗をかくか考えないように、ひたすら良い面だけに着目して口を動かす。結局、最も大変だと思われる配置が選ばれた。「子どもが調べ学習するときの動線が完璧!」プランである。何か考えると足が止まる!!と直感が叫ぶ。私は、すぐにそばの机を持ち上げ…ようとした。
--おっっっもっっっ!!!
「おっっっもっっっ!!!」
完全に思ったことが口に出た。ハヤブサさんがすかさず駆けつけて片側を持ってくれる。よかった、「もういやだ!!」って、続きを言わなくて。
結局。本棚2つとベンチ。大型の学習テーブルを全て移動させた。実際に配置してみると、かなりよい。かなりよいよ!学習スペースと読書スペースがいい感じで分かれて、調べ学習時に子ども同士がぶつかりにくい!これは完璧なのでは?!私は額に浮かぶ汗を手の甲で拭うという青春の1ページ的な自分に悦に入る余裕が戻りつつあった。ハヤブサさんを振り返る。きっと、笑顔なのでは?と思って。
「入り口から見たら、ちょっと会議室っぽくて圧力がありますね。」
続☆図書室仕事

見てる!全体を俯瞰して見てる!!さっきもこの感覚あった!!!「そうかな?そんなことないと思うけど」って言え、私!!!!
私はハヤブサさんの横まで移動する。「そんなことない」って言うために。一緒に並んで、入り口から図書室の中を覗き込むように…見る。
「…ほんと…ですね。」-あ〜〜〜!言っちゃった!(再)
こうして、さらに半分の机を移動させ終えた頃には、私の上半身はしっとりと濡れていた。こうやって文字にすると、なんか艶っぽいが、化粧は崩れてるわ、息はあがってるわ、ズボンは膝まで捲り上げているわで、ひどい格好だった。
「ハヤブサさん!すごいですね!これは使いやすいですよ。さすがです。」
私は心から称賛を送った。だって、全然疲れてない。「体をいい感じで動かしたから、午後は頭を働かせる仕事が捗りそうです!」って言ってる。職員室のクーラーを全身に浴びながら、パソコンに向かうハヤブサさんを、遠くを見るような視線で眺める。
--まだ…11時…か。
私は、重たい体を何とか立ち上がらせ、職員室の一角にまっすぐに進んだ。出勤簿を手に取り、管理職に声をかける。まっすぐに前を見て。
「すみません、午後はお休みをいただきます。」
かくして、午後に休みをもぎとった私は、家に帰っていの一番に風呂場に駆け込んだ。炭酸水で一気に喉を刺激して、ソファに倒れ込んだとき、自然と口をついて出た。
「40歳過ぎたら、もう無理だなぁ。」
あ!この人、自分の中途半端な性格とか思ったほどなかった体力とか、全部、年のせいにした。あんなに若い部類とか思っていたくせに!そんな自分の年齢相応の体力を突きつけられ、さらにはきっと一人だったら図書室を改造するところまではいかなかっただろうという事実を目の当たりにして、赤面する。はっずかしい!年齢相応じゃん!と。
体の痛みとか疲労とか、ハヤブサさんと比べたときの自分のしょうも無さとか、とにかく体もメンタルも立て直す必要がある。2学期に子どもたちが「わー!図書室が変わってる!」とキラキラした瞳で話しかけてくる様子を想像し、図書室でだれかが授業をしてくれる期待をしながら、秘蔵のチョコをかじる。
--これで、2学期に一回も授業で図書室使われなかったら…
「いや〜ツラいねぇ」
独り言が増えた40代。これで、しばらくは自己評価の上振れは起きないだろうという、ちょっとした安心感とともに、夏休みを満喫したのである。

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